ジャンル
とう

ライン

工房名・地域
ももさきとうぼう
(阿蘇郡西原村→熊本市)
氏名
ももさきたかよし

ライン

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工芸家プロフィール

1981年
佐賀県有田町で陶芸修行、福田英明氏に師事。
1986年
西部工芸展、九州山口陶磁器展、西日本陶芸美術展にいずれも初入選。
1989年
阿蘇郡西原村に築窯。
1991年
西部工芸展で熊本県知事賞
九州山口陶磁展毎日新聞賞ほか受賞歴多数
個展なども精力的に行う
日本工芸会準会員

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インタビュー記事(2010年頃、2017年頃追記)

中国で生まれた“せい”に取り組んで40年近く経つ、陶芸家の桃崎孝美さん。焼き物の一大産地である佐賀県有田町で修行中、青瓷の美しさに惹かれました。
中国の古典に学びながら試行錯誤を繰り返してきたそうですが、青瓷は表面の微小なピンホールさえも傷とみなされる繊細な焼き物。焼き方は2つに大別されます。一つは“還元焼成”。
窯を酸素不足にして不完全燃焼の状態にすると発色剤に用いた酸化鉄の作用で青瓷特有の碧や空色を生み出します。もおう一つの“酸化焼成”は、逆に空気を窯に十分供給して完全燃焼させます。そうすると表面は鉄錆色に発色します。
窯の煙突にある煙道を遮断するダンパーで酸素の量を調整するのです。
青瓷は釉薬を何度も塗り重ねて生まれる絹のような質感と深みを帯びた水色が特徴ですが、桃崎陶房で使う青瓷用の釉薬は10種類。
長石や木灰などの原料によって完成した色合いが違ってくるため、過去の文献をもとに配合を1%単位で変えながら納得するものを作ってきたといいます。「テストだけだと5000近く試してきましたよ」。  

釉薬の掛け方も独特で、最初に釉薬の中に素焼きした作品を浸した後、4〜5o程度の厚みになるまでスプレーガンで釉薬を塗り重ねていきます。
釉薬が厚いぶん、キズも出やすい。青瓷の釉薬は粘り気があるため、焼成の際に発生するガスがうまく外に逃げられず、クレーター状の穴が生じてしまうこともあります。
「失敗すれば、一窯全滅。それも何度となく経験しました。そのときは、さすがにやる気を失うことがありますが」と苦笑いしますが、それでも止められない魅力が青瓷に潜んでいるのでしょう。
桃崎さんが研究を続けているのが氷裂貫入(ひょうれつかんにゅう)という技法です。還元焼成では納得する青色を生み出すのが非常に難しいといいます。貫入とは土と釉薬の収縮率の差によって器の表面に入るヒビの事。氷裂貫入はその名の通り、配合や焼き方の加減によってヒビが折り重なり、鱗状を呈して幻想的な美しさを生み出します。
平成28年熊本地震では、西原村にあった工房が全壊しましたが、現在は熊本市内の自宅を工房として、澄み切った空のような“天青の色”を目指し、窯を燃やし続けています。

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