インタビュー記事(2010年頃)
コミカルで愛嬌のある鬼や魚のモチーフ、優美な唐草のアレンジまで、きのしたようこさんの手にかかれば身につける人を楽しくさせる魅力的な絵柄やデザインの肥後象がんとなります。幼い頃から工作や絵画が得意で、美大では油絵を専攻。以前から故郷・熊本の伝統工芸である肥後象がんに関心があったものの、当時は学べる場所もなく彫金の世界に飛び込んだのが始まりだったそうです。「ほかに美術関係の仕事もしていましたので彫金はほとんど独学でしたが、当時は、西部金工研究会で勉強する仲間に恵まれ、公募展などにも出品していました」きのしたさんに転機が訪れたのは、2000年のこと。伝統工芸館で“後継者養成講座”の募集が始まると同時に、迷わず応募。第一期生として肥後象がん師への道を歩み始めました。
「肥後象がんは郷土を代表する伝統技法ですし、鉄地に金や銀を施すことで華やかにも渋くもなる。私は基本的に絵を描きたいので、たとえば縁起の良い物など身に付けると幸せな気持ちになってもらえる作品を作りたいですね」。ペンダントトップやブローチなどの装身具を主体に作っていますが、最近では香炉などの大きな物にも挑戦しています。そのために漆や木工の基礎も勉強してきたそうですが、全ては象がんを引き立てるため。「せっかく手に入れた肥後象がんをしまい込んでしまうのはもったいない。使わないときは専用の額に飾ってもらえたらと思って」肥後象がんを全く知らない若者たちにも身につけてもらえるよう、自由な発想とデザインで肥後象がんの新しい境地を開こうと模索中です。