インタビュー記事(2010年頃、2017年頃追記)
菊池市泗水町で、食器を中心とする焼き物づくりに取り組む福吉直子さん。焼き物を志すきっかけとなった同じく陶芸家で兄の福吉浩一さんと同じ場所に工房を構えていますが、その作風は全く異なります。「野の花が好きで器に描いてみたいと思い、上絵付けの手法を学びました。通常は素焼きの後、呉須やベンガラといった顔料を施して釉薬をかけ本焼きすれば終了ですが、私の場合はさらに上絵付けと焼き付けの作業が加わります」赤、黄、紫、青、緑という透明感のある5色を基本に、素朴な土色を残す茶碗や湯飲みにかわいらしい野の花を彩色します。本焼きの後に絵付けをするので、絵の部分に軽く触れると薄く盛り上がっているのが分かります。この手法は石川県の九谷焼や佐賀県の有田焼で用いられていますが、手間がかかるため熊本では珍しいです。
粘土は白土と赤土をブレンドしたものを使い、絵柄がより映えるようにと泥状の化粧土で表面に白化粧を施します。ろくろやたたら作りで成型した粘土は、柔らかいうちに線彫りで絵柄の輪郭を彫って素焼きに。それから本焼き、上絵付けをして最後に再び焼き上げます。「一回ごとに焼上がりは違いますが、とくに皿の場合は窯内で炎の通り道を塞ぎやすいため、色ムラが出ることもあるんです」直子さんは上絵付け以外にも、鮮やかなコバルトをスプレーで吹き付けた大皿などさまざまな取り組みに挑戦しています。
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