工芸家プロフィール
賞暦(1972年〜2022年) ▼
小代焼の歴史は古く、文禄・慶長の役の際、加藤清正とともに来日した朝鮮の陶工に始まるとする説と、1632年に細川家が豊前から肥後へ転封される際、これに従った上野焼の陶工が小岱山麓に窯を開いたことに始まるという説があります。その特徴である味わい深い地釉と自由奔放な流し掛けは、素朴で力強く、その器形とともに日常に合う美しい器として人々に愛用されてきました。
井上泰秋氏はこの地に生まれ、県工業試験場での2年の学びと6年の修業ののち1965年(昭和40年)肥後焼として独立し、1968年(昭和43年)、小代焼発祥の地に近い荒尾市府本に「小代焼ふもと窯」を開きました。以来、小代焼を育んだ自然と伝統を大切に、小代焼の第一人者として優れた作品を作り出しています。
インタビュー記事(2010年頃)
ふもと窯の窯元・
現在は、ふもと窯の作品の7割近くを息子の尚之さんが手がけています。中世イギリスの陶器・スリップウェアを日本スタイルにアレンジした食器が全国的に評判を呼び、ファンも多くいます。生乾きの鉢や皿の全面に地色となるスリップ(泥漿状[でいしょうじょう]の化粧土)をかけ、さらに上からスポイトで白いスリップを細く垂らして筆を入れたり櫛(くし)状の道具で引っかいたりしていくと、地色とのコントラストが美しい模様が浮かび上がります。“新しいモノは一切作らない”という尚之さん。これは古代人が貝殻や草木をデザインのモデルとしたように、小代焼の原点である古小代を指標として、自分の作品にしていくことなのだと思います。