相良藩の御用窯だった一の成なり田た勝かつ人とさんの下で焼き物を学び始めた西にし 川かわ講こう生せいさん。その後、小代焼のふもと窯でさらに腕を磨き、原料の土にも恵まれた今の場所に「中なか平でら窯がま」を構えました。「私は作家や先生ではなく、ただの“茶碗屋”です。使って楽しんでもらえれば、それでいいんですよ」と優しく笑います。裏庭から土を掘っては粘土を作り、薪を割っては燃料作り。「ほぼ自給自足なので、力仕事が大半です」小代の土は鉄分が多いため、釉薬として調合使用して独特の色合いを出しています。西川さんが作る小代焼は昔ながらの青小代・白小代・黄小代が基本です。いずれも同じワラ灰をベースにしつつ、調合や焚き方で色が変わります。白掛けが流れ落ちるような小代焼独特の模様は「打ち掛け流し」、「杓しゃく掛け」さまざまな技法があり、作品の大きさなどによって使い分けています。
作る器ごとに粘土を作っているのも、西川さんならではのこだわり。「口があたるカップの場合、土の段階で砂を濾(こ)して取り分け、キメの細かな粘土を作りますし、花瓶などの場合は表面に味を出したいので、砂をわざと加えて粗めにしたり。粘土作りには3カ月近くかかりますが、その過程で“次は何を作ろうか”と考えることも楽しいんです」毎年1年生の気持ちでいろんなことに挑戦しているという西川さん。“失敗こそ次のヒントになる”と、前向きに精進を重ねています。「器は、少し物足りないくらいで丁度いいと思うんです。使い手の皆さんが食器に料理を盛りつけたり、花瓶に花を生けたときに完成するものだから。“これで一杯やったらウマいだろう”なんて、使う場面を想像しながら作っています」
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